畠田千鶴連載

連載「都会で味わう 望郷の正月料理」

新しい年が明けた。JTBの旅行動向調査によると、この年末年始(12月23日~1月3日)に「一泊以上の旅行に出かける人」は、1800万人の見込みで、前年度比の80%増だが、新型コロナウイルス感染拡大前の前々年度比は38.5%減である(2021年12月9日発表)。旅行客は以前のようには回復しておらず、今年も巣ごもり(寝正月)という方もいる。

わが家で過ごすお正月は、やはり「食」にこだわりたい。コロナ以降、高級食材のおせち料理やフグ・カニなど特産品のネット通販が人気だ。

都内の自治体アンテナショップでも、師走に入るとお正月商品が揃い始める。干支の置物や正月飾りの伝統工芸品、餅・蒲鉾・数の子・黒豆などお馴染みの食品に加えて、地域ならではの珍しい「祝いの食」が売り場に並ぶ。

香川県のお雑煮用「あん餅」の販売 12月15日(筆者撮影)

新橋駅前にあるアンテナショップ「香川・愛媛せとうち旬彩館」では、今年も香川県の名物「年明けうどん」や「あん餅雑煮」の材料が暮れから、期間限定で販売されている。あん餅雑煮は、白味噌仕立の汁に、甘い餡の入った丸餅を入れて新年を祝う郷土料理だ。担当者によると「購入者の多くが香川県出身者で、昨年の年末年始は帰省できなかった多くの出身者がふるさとの味を懐かしがって買い求めた。また、メディアで情報を得た一般の方も珍しさから購入した。」とのことだ。一方、年明けうどんは、2009年に麺食の普及、新たな食文化創出のために、香川県で提唱された新しい料理だ。純白のうどんに、梅干し、海老、人参などの「紅」を乗せ、紅白揃えてお正月をお祝いする。二つの正月料理は、同館2階のレストラン「かおりひめ」でも、1月15日まで味わうことができる。

「うどん県」を標榜する香川県では、2014年から毎年暮れに、高松市内で「年明けうどん大会inさぬき」が開催されている。稲庭(秋田県)、水沢(群馬県)、吉田(山梨県)、伊勢(三重県)など全国の名物うどんが出展される。また、2021年12月には「日清のおめでどん兵衛 年明けうどん」というカップうどんが販売された。プロモーションの成果が広がりつつある。もちろん、アンテナショップがこのプロジェクトの一翼を担ったことは言うまでもない。

 アンテナショップの年末商戦は魅力的だ。LINEやメルマガで店舗から届く、限定商品や催事の情報で、つい足を運びたくなる。クリスマスは「おいしい山形プラザ」のイタリア料理、忘年会・新年会は「あきた美彩館」で比内鶏のきりたんぽ鍋と地酒でディナー、「銀座NAGANO」で年越し蕎麦を買い、「いしかわ百万石物語江戸本店」で老舗加賀料理店のお節を注文するなど、楽しみ方はさまざまだ。

筆者自身は、倉敷の祖母直伝の魚介類がたっぷり入った醤油仕立ての「丸雑煮」や料理で食卓を囲む時、心底くつろぐ。

(地域活性化センター 畠田千鶴)

(Kyodo Weekly・政経週報 2022年1月10日号掲載)

連載 コンテンツ

連載1 アンテナショップ 成功のカギは立地にあり

連載2 テストマーケティング めざせ!定番商品

関連リンク

一般社団法人 地域活性化センター

プルメリアでは多岐にわたるテーマとスピーカーによる講演・セミナーをアレンジしています。ご相談は、こちらよりお問い合わせください