畠田千鶴連載

ご当地鍋で応援消費

鍋料理が恋しい季節になった。家族や仲間と鍋を囲んで「ふうふう」しながら食べる。鍋奉行は、火の強さや具材を入れるタイミング、食べごろを差配する。冬の日常風景であったが、ここ3年間はコロナの影響であまり見かけない。

きりたんぽ鍋 写真提供:秋田県観光連盟

また、最近では鍋料理の楽しみ方も変化している。アンテナショップ、通販サイト、ふるさと納税などで入手した「ご当地鍋」を味わう機会が増えている。ふるさと納税の人気ランキングには、鍋用のズワイガニや牛肉が上位に並ぶ。アンテナショップでは、自慢の鍋の食材(下関のふぐ、近江牛など)や調味料(ポン酢、柚子胡椒など)が販売されており、飲食コーナーでは本場の味を堪能することもできる。

品川駅前にある秋田県のアンテナショップ「あきた美彩館」の物販コーナーでは、秋田県を代表する郷土料理、きりたんぽ鍋やしょっつる鍋の食材が揃う。きりたんぽ鍋は、すり潰したごはんを棒に刺して焼いた「きりたんぽ」に、比内地鶏、長ネギ、セリ、マイタケ、ゴボウなどを加えて鶏ガラスープで煮る。しょっつる鍋は、ハタハタに野菜類を加えてハタハタの魚醤「しょっつる」のだし汁で煮る。

美彩館の江川店長によると、きりたんぽ鍋の材料は年間を通して販売しており、秋田の地酒も一緒に入手が可能とのこと。きりたんぽ鍋には、香りの高い吟醸酒がお薦めで、焼いたきりたんぽの芳ばしさやセリなどの食材の香りが調和され“黄金の組み合わせ”を楽しめるそうだ。

ダイニングコーナーには約70席あり、テーブル席のほかに、秋田杉の間、かまくらの間、なまはげの間といった3つの飲食空間があり、きりたんぽ鍋、稲庭うどん、地酒、おつまみに、いぶりがっこ(燻製した大根の漬物)、ハタハタ寿司(飯寿司)など、秋田ならではの料理を味わえるのが人気だ。

しかし、江川館長は「忘年会、新年会など、夜の大口の予約はまだ回復していない」と言う。コロナ発生前に人気のあった催し、地酒飲み放題と料理がセットになった「あきた酒っこフェスタ」や国の重要無形民俗文化財のなまはげが店内を練り歩く「なまはげ夜会」も現在は休止している。

厳冬期に向かって、コロナの感染は第八波に入った。年末年始、仲間と大鍋をつつきながら、酒を酌み交わし、大いに盛り上がることは難しいかもしれない。せめて、出身地やご縁のある地域の特産品を購入し、味わいながら産地の応援をしたいと思う。

地域活性化センター 畠田千鶴

(Kyodo Weekly・政経週報 2022年12月15日号掲載)

連載 コンテンツ

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