畠田千鶴連載

連載「地酒でつながるアンテナショップ」

 新型コロナの発生前の東京では、サクッと飲める「立ち飲み屋」がちょっとしたブームとなり、黄昏時には、ホッピーと焼き鳥がメインの昭和を感じさせる酒場や、酒屋の店内で飲む角打ち、スペインバルなどが仕事帰りの人々で賑わっていた。ことし3月にまん延防止等重点措置期間が解除されて以降は、営業を再開する店も目にする。

自治体が運営するアンテナショップでも、気軽に飲酒ができるコーナーを設置し、自慢の酒類やつまみを出す店舗が増えている。「銀座NAGANO」のバルカウンター、「日本橋とやま館」のトヤマバーは店外からも目立つ場所に設置し誘客のフックとなっている。

(写真)酒サーバーを説明する尾野酒主任 4月29日筆者撮影

四月末、日本屈指の酒どころである新潟県のアンテナショップ「表参道・新潟館ネスパス」内にある「新潟清酒立ち呑みBAR COCO」を訪ねた。感染症対策が講じられたコーナーに入ると、県内の蔵元の酒瓶のディスプレーが目に入る。注文は好みの酒を1杯からでも可能だが、厳選された八種類の酒から三種類を選び、セルフで酒サーバーからお猪口に注ぎながら飲み比べるセット(五五〇円)がおすすめだ。ラインナップは、全国的に有名な「久保田」からニューウェーブの「イットキー」までバラエティに富んでいる。加えて、プレミアム、日替わり、季節限定の酒もそろい、つまみも充実している。村上の鮭とば、いごねり(海藻の加工食品)、ハリハリ漬、栃尾の油揚げなど新潟の味が四品盛られた「ご当地おつまみセット(六九〇円)」が堪能できる。これらの酒や食材は店内で販売しており、お気に入りの商品を購入できる。その後のネット購入の機会にもつながる。同コーナーを担当する酒主任の尾野祐介さんは「コロナの影響で休業、酒類販売や営業時間の短縮の要請で売上が落ちたが、まん延防止等重点措置の解除後、お客様は順調に増えている。」と期待を寄せる。

 国税庁「酒のしおり」二〇二二年三月によると、二〇二一年の国内酒類消費の全体量は、前年に引き続き減少したものの、日本酒とウイスキーは最近の国際的な評価の高まりで輸出は好調であり、二〇二一年には輸出金額が一千億円を突破し、十年連続で過去最高を記録した。

 人口減少により、市場規模が縮小する地方において、新たな市場を開拓することは重要な課題だ。自治体が運営するアンテナショップの役割は、生産現場と国内外の大消費地をつなぎ、商品や地域そのもののプロモーションに取り組むことだと思う。強みは、リアルな人の出会い、消費者ニーズの把握、収集した情報をダイレクトに地元にフィードバックし改善をサポートできることだ。今後も、変化する市場の状況を把握し、地域のハブとしての活躍が楽しみである。

地域活性化センター 畠田千鶴

(Kyodo Weekly・政経週報 2022年5月23日号掲載)

連載 コンテンツ

連載1 アンテナショップ 成功のカギは立地にあり

連載2 テストマーケティング めざせ!定番商品

連載3 都会で味わう 望郷の正月料理

連載4 アンテナ店売上げ減少 デジタルで新たな挑戦

連載5 デザイン力で地域をPR

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