連載「アンテナショップ 成功のカギは立地にあり」
銀座を歩いていると、一等地の一角で特産品を販売する路面店を見かける。自治体が運営するアンテナショップは、銀座・有楽町エリアに21店舗(8月2日現在)あり、複数店舗を回遊する人も多い。
なぜ、こんなにも「銀座界隈」にアンテナショップが集積したのか。この背景には、1990年代のバブル崩壊と2000年代から始まった東京駅八重洲口の再開発が関係している。
銀座周辺にアンテナショップが集積する前、約30の自治体が八重洲北口の二つのビル(鉄道会館、国際観光会館)に観光案内所を設置していた。現在のグラントウキョウノースタワーの辺りだ。
再開発が進む中、いち早く、今までの観光案内所とは異なる「地域プロモーションの場」を目指したのは、1994年の沖縄県「銀座わしたショップ」(銀座)と1995年の鹿児島県「かごしま遊楽館」(有楽町)であった。日本を代表する繁華街に、地域発のビジネスモデルが誕生した。
時は、ちょうどバブル崩壊後で、同エリアの店舗の賃貸料も下がり、出店しやすい状況でもあった。また、自治体にとってブランドイメージの高い銀座は最適な場所であった。
当時は、今や主流であるネット通販の整備がない中、東京でも全国の特産品を入手するのは簡単ではなく、遠く離れた地域の泡盛や芋焼酎、安全かつ高品質の食品が入手できる常設店はヒットの条件を備え、都会に住む人たちの心をつかんだ。
沖縄県と鹿児島県の成功は「呼び水」となり、同エリアでは2000年度6店から2020年度20店までに増加し、各店舗が持つ地域の「魅力」をPRしたアンテナショップが続々と誕生している。
1980年代には、すでに都内に地方の物産館が点在し、注目されていたが大ブームにはならなかった。
福井県は、2024年の北陸新幹線の開業(金沢~敦賀駅間)を見据えて、南青山と銀座にあるアンテナショップを集約させ、人通りの多い銀座1丁目の柳通りに新店舗を取得し、2022年の出店を予定している。新店舗の賃貸借物件は公募し、21件もの応募があったと担当者を驚かせた。
2013年以降、東京五輪の開催決定、訪日外国人へのビザ要件の緩和、免税措置により、銀座エリアへの観光客が急増した。家賃も高騰して、出店を計画する自治体は店舗確保に苦労していたが、コロナの影響で状況が一変した。
まるで、バブル後のふりだしに戻ったようにも思えるが、今は、アンテナショップの認知度、長年に渡る運営の実績、取引先との信頼関係、店を訪れるファンという「財産」がある。
これらは、コロナ禍を乗り越えるための大きなエンジンとして期待ができる。
(地域活性化センター 畠田千鶴)
(Kyodo Weekly・政経週報 2021年10月11日号掲載)
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