畠田千鶴連載

一つ星アンテナショップ

「ミシュランガイド東京2023」が、昨年の秋に発表された。いわずと知れた、フランスのタイヤメーカーが厳選したレストラン・ホテルを星の数で評価する世界的なグルメガイドブックだ。

スペイン風にアレンジされた大和肉鶏と奈良の冬の根菜(トキにて) 2023年1月19日 筆者撮影

一つ星として評価された店舗の中に、奈良県ブランドショップ「奈良まほろば館」が併設するレストラン&バル「TOKi」(トキ)が名を連ねた。自治体アンテナショップで選ばれたのは奈良県のみである。

奈良まほろば館は、2021年3月のコロナ禍の中、日本橋から新橋に移転。「出店に際して、奈良県の魅力を伝えるため、物販、観光、イベントに加えて、“食”のゾーンを新設した。“食”については奈良の食材を最大限に生かした料理が作れる飲食店にお任せした。」と、古川義富美館長は語ってくれた。

トキは、奈良市内にある「ミシュランガイド奈良2022」で二つ星を獲得したモダンスパニッシュの名店「アコルドゥ」が運営している。 

筆者はさっそく、同館の2階にあるトキにランチを食べに出かけた。12時の開店を前にすでに数人が入り口に待ち並び、オープンとともに次第に席は埋まっていった。内装はモノトーンで、カウンター、壁面、椅子には県産材の吉野杉が使われ、落ち着いた雰囲気だ。

店内は、レストラン(テーブル席)とバル(カウンター席)にゾーニングされ、ランチメニューは異なる。筆者はバルランチを選び、奈良県産の野菜や鶏肉を使った料理を堪能した。スープ、サラダ、メインディッシュ、パンで1980円といったリーズナブルな値段だ。

本格的にランチやディナーを味わいたい時は、事前予約制のレストランでコース料理を楽しめる。林次郎マネージャーは「奈良の食材とスペイン料理を融合したメニューを提供することを大切にしている」と語る。

食事中、スタッフが生産地や素材の特徴、料理の方法、店内の装飾についてさりげなく説明してくれるなど、ホスピタリティも充実している。また、同館1階のカフェ&バーでは、名物の柿の葉寿司、三輪素麺、地酒などが味わえる。

昨年12月、奈良県ではオンラインも含めて120か国以上が参加した「ガストロノミーツーリズム世界フォーラム」が開催された。ガストロノミーツーリズムとは、地域の風土や伝統に育まれた食文化に触れることを目的とした観光である。 アンテナショップを使った食文化の発信は、地元への送客口となるだろう。食事を目的に訪れた観光客がわくわくして再訪したくなるような、料理やサービスが全国各地で根付くことが楽しみである。

地域活性化センター 畠田千鶴

(Kyodo Weekly・政経週報 2023年2月13日号掲載)

連載 コンテンツ

連載1 アンテナショップ 成功のカギは立地にあり

連載2 テストマーケティング めざせ!定番商品

連載3 都会で味わう 望郷の正月料理

連載4 アンテナ店売上げ減少 デジタルで新たな挑戦

連載5 デザイン力で地域をPR

連載6 地酒でつながるアンテナショップ

連載7 SDGsとアンテナショップ

連載8 旬の果実をプロモーション

連載9 新米を味わう旅

連載10 地域のマーケティング戦略

連載11 ご当地鍋で応援消費

関連リンク

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